ながいかいわ

やさいのこと、くだもののこと

くりを拾いに熊本へ

f:id:yucca:20130924162057j:plain私の母方の親戚が、熊本県の人吉市(九州のこのあたり)で栗農家をしています。みつおおじさん、せいこおばさん、しげよねえちゃんといいます。みんな80歳ぐらいです。おじさん達は、私が子供の頃から毎年栗を送ってくれていましたが、私からは特別にお礼をした事もなかったし、せっかく同じ九州にいるのだしで、今年は作業を手伝いに行ってきました。

 


f:id:yucca:20130924162604j:plain3人が住んでいるのは、おじさんが手作りしたこの家です。彼はもと大工さん。部屋を継ぎ足したり補修したりして、今の形になったそうです。バリアフリーという概念はなく、中は段差地獄でした。私はいろんな所で足を引っかけるけど、おじさん達は不思議なでっぱりもひょいひょいと乗り越えて、難なく暮らしています。暮らしながら足腰も鍛えている、と言えるでしょう。特におじさん。ふくらはぎと腕が、ムキっとしています。私は伊藤英明の肉体を見ると、はっと息を飲んでしまうんですが、おじさんの力こぶを見た時同じ反応がでました。


f:id:yucca:20130924162208j:plain家の前に広がる庭が、そのまま栗林になっています。せいこおばさんが一人で竜のヒゲをせっせと植えて、区分けをしたそうです。林がずーっと遠くまで続いていて、栗の木の間に時々自家用のやさいが植えてあり、里芋のはっぱが驚くほど大きく、わさわさと茂っていたりするのが、映画の中の風景のようです。一人で林の中に立っていると頭の中もしんとしてきて、気持ちいいんです。とてもいい場所。
f:id:yucca:20130924162115j:plain実は私達が人吉に着く前日、しげよねえちゃんが怪我で入院しました。けいちゃんと私の素人×2で、熟練×1分の労力を補おうと、栗を拾うだけなんですが力が入りました。
さて作業です。こうやって無秩序にごろごろと落ちている栗を、時には竜のヒゲの中から探し出し、ゴミばさみ(?)で拾い集めます。


f:id:yucca:20130924162139j:plainある程度集まったら、栗専用のグローブをはめて、いがを開いて実を取り出します。グローブをしてても、ぎゅっと握るといがささるので注意しつつ。
f:id:yucca:20130924162223j:plain…栗拾いの作業ってそんだけです。バケツ3つ分拾いました。
f:id:yucca:20130924162301j:plain広げるとこんな。このまましばらく乾燥させます。栗は、いがの中で汗をかいているからです。湿ったままにしておくとかびが生えます。この時はこの状態で一晩おきました。
f:id:yucca:20130924162322j:plainここからが農家さんらしいと言えるかも知れませんが、乾燥の後、いい栗わるい栗を選別します。いい物はまっすぐ東京、大阪へ出荷されるそうです(この大都会めー)。わるい物の方は、わるいと言っても食べられないわけではなく、商品にできないという事で、いい物に比べると痛みが早いので気をつけてね、という程度。人にあげたり、地元の道の駅で売ったりするそうです。以下のポイントでわるい物を選り分け、除いていきます。


・形がゆがんでいる
・皮に黒い点々が入っている→点々が"炭疽病"という栗の病気のもとになる
・皮が割れている(裂けている)
・しわが寄っている→まだ熟していない場合が多い
・おしりの部分に穴が空いている→中に虫がいる
・おしりの部分を触るとねちょねちょする→中に虫がいる可能性が高い


選別が終わったら磨きです。おばさんが、タオルでぎゅっぎゅとこすりつけるようにすると、ワックスをかけた床みたいに光ってきます。つやつや、とても綺麗でした。


f:id:yucca:20130924162403j:plainそして、いよいよ農協さんへ納品です。おじさん達の手から離れた栗は、おおきなベルトコンベアに乗って、さらに選別をされるそうです。それからいい物はまっすぐ東京、大…。だそうです。
農作物等は
軽トラなどで運ぶのが一般的だと思うのですが、みつおおじさんは毎日、この台車付き自転車(お手製)を30分こいで、えっちらおっちら運ぶんだそう。くるまかわないのかな。カーブでのGのかかり具合に対するハンドルのネジの閉め具合だったかを相当研究したみたいで、喜々として説明してくれるんですが、こちらはもう、ただただ聞いて、ほえーって言うだけ。変なおじさん。


ついでに言うとおじさんには、上の前歯が全部ありません。私は会う度に「入歯したら?」と優しく優しく勧めていましたが、彼はむにゃむにゃとはぐらかすばかり。今回もやはりみんなで前歯問題を考える時間があったんですが、度重なる入歯の提案に対しておじさんはついに答えました。
「おれはもう、歯はいらん」
高くて、大きな声でした。
おばさんが言うには、何でも丸のみ出来るような域に達したそうです。私は、はっと、息を飲みました。車もいらん。歯もいらん。かっこ良くないですか。


最後になりましたが、おじさんが歯のない口をにぱっと開けて、嬉しそうに説明してくれたお話を、少しだけ書いておきます。
この栗林には、"丹沢(タンザワ)"、"杉光(スギヒカリ)"、"利平(リヘイ)"という3種類の品種が植えてあり、それぞれ実の熟す早さが 違います。熟す早さが違うという事は木から落ちる時期にも早い遅いの違いがあるという事。8月の下旬から10月いっぱいくらいまで、"丹沢"、"杉光"、"利平"の順に落ちてくるそうです。お邪魔した時は"杉光"の時期でした。シーズンが終わればいらなくなった枝を切り落とし、葉が落ちたら堆肥を施します。翌春に化学肥料をまき、5月くらいに花が咲くそうです(とっても甘い香りらしい)。そしてまた、栗拾いの季節が巡ってくる訳です。農薬は使わないそうです。


もし、みなさんがスーパーで熊本県産の栗を見つけたら、これはみつおのかな?って思い出してくれたら嬉しいです。特に東京、大阪の方。それは、まっすぐそちらへ運ばれた、いいやつですからね。たのむよ。